放射性炭素年代測定の基礎知識

  • 1947年、ウイラード・リビー博士が放射性炭素年代測定法を発見しました
  • 炭素14(C14 or 14C)は炭素の放射性同位体です
  • 放射性炭素年代測定は有機物や一部の無機物に適用可能です。金属は測れません
  • ガスプロポーショナルカウンティング、液体シンチレーションカウンティング、 加速器質量分析(AMS)が主な測定方法です
  • 放射性炭素年代測定では Oxalic Acid I 、Oxalic Acid IIを標準物質として用います
  • 放射性炭素年代はConventional Radiocarbon Ageとして報告されます

放射性炭素年代測定の発明は20世紀の人類の発明の中でも最も重要なもののひとつです。 過去数万年から現代にいたるまでの地球そして人類の歴史を解明するのに最も重要な手法のひとつであることに間違いありません。考古学、人類学においてセオリーの立証または反証の根拠となってきました。 また、地質学、水文学、地球物理学、大気科学、海洋学、古気候学など幅広い分野で利用されてきました

放射性炭素年代測定の開発者

アメリカの物理化学者 ウイラード・リビー博士(Willard Libby)は第二次大戦後、放射性炭素の測定方法を開発するためのチームを率いていました。リビー博士は初めて生命体には放射性炭素(C14)が存在していることを唱えました。リビー博士とそのチームは初めて有機物試料の放射性炭素を測定するのに成功し、論文を発表しました。また初めて放射性炭素年の半減期 (リビーの半減期5568±30年)を測定しました。リビー博士は1960年に放射性炭素年代測定法の開発に尽力した功績でノーベル化学賞を受賞しました。

放射性炭素年代測定の原理

放射性炭素年代測定(C14)は炭素の同位体のひとつで、放射性物質です。炭素の安定同位体は、C12とC13です。放射性炭素(C14)は大気圏上層で、宇宙線の二次中性子と窒素の反応によって生成されます。生成されたC14は大気中でただちに酸化され二酸化炭素として地球圏の炭素サイクルに組み込まれます。植物は光合成によってC14を含んだ二酸化炭素を取り込み、動物も食物連鎖によってC14を取り込みます。それら生物の生命が終わると、生物圏の炭素のやりとりも終了します。その時から、C14はその放射性崩壊の割合に従って減っていきます。試料に残っているC14を測定することによって、その生物の死後の経過時間がわかります。

放射性炭素年代測定の対象物

全ての物質が測定対象になるわけではありません。炭素を含む有機物や、貝・アラゴナイトなどの無機物などが測定可能です。 これまでに、、革、ピート土壌土器付着物花粉、サンゴ、繊維、紙、など様々なものが測定されてきました。放射性炭素年代測定を行うためには、二次的に混入した炭素を取り除くために、物理的および化学的な試料の前処理が必要です。

放射性炭素の測定方法

Beta AMS Lab

試料のC14量を測るには主に三つの手法があります。ガスプロポーショナルカウンティング、液体シンチレーションカウンティング、 加速器質量分析(AMS)です。
ガスプロポーショナルカウンティングは試料を二酸化炭素に変え、ガスプロポーショナルカウンタによってC14濃度を測定します。 液体シンチレーションカウンティングは1960年代から普及した方法です。液体に調製された試料にシンチレーターと呼ばれる光を発生する物質が加えられます。シンチレーターはベータ粒子が入ると光ります。試料は2つの光電子増倍管の間に置かれ両方の光電子増倍管に光が記録された時のみカウントされます。 加速器質量分析法(AMS)は三つの方法の中では一番新しいものです。この方法ではC14のC12,C13に対する比が直接計測されます。

放射性炭素年代測定のスタンダード(標準物質)

年代のわからない試料の年代は、試料のC14濃度と、現代およびC14を含まない試料のC14濃度を比較することによって決められます。最初のモダンスタンダードはNational Institute of Standardsand Technologyが発行したOxalic Acid Iです。このシュウ酸は1955年の甜菜から調製されました。Oxalic Acid I の放射性炭素濃度に0.95を乗じた値は化石燃料の影響を受けていない1890年の木の放射性炭素濃度(absolute radiocarbon standard)に相当します。Oxalic Acid Iがほぼ消費された後、1977年のFrench beet molassesから新しいスタンダード(Oxalic Acid II)が調製されました。 Oxalic Acid Iiは Oxalic Acid Iの約1.3倍のC14放射能を持ちます。C14をほぼ含まない(バックグラウンド)のC14濃度も、分析中に試料以外から寄与されるC14の影響を取り除くために測定されます。バックラウンド試料のC14濃度は測定試料のC14濃度から差し引かれます。バックグラウンド試料には通常、地質学的に非常に古いことがわかっている(infinite age)もの、石炭、亜炭、石灰岩などが用いられます。

Conventional Radiocarbon Age(CRA)

Conventional Radiocarbon Ageは

(a)リビーの半減期を用いること
(b) Oxalic Acid I or II もしくはそれに準拠するスタンダードを用いること
(c)安定同位体(C13)を-25‰に規格化することによって同位体分別の補正を行うこと
(d)AD1950を基準年(0 yBP) とすること
(e)放射性炭素濃度は一定であったと仮定する

と定義されています。また誤差は統計誤差を用い、結果には “±” と記されます。