年輪年代と放射性炭素年代の較正

  • 木年輪が放射性炭素年代を較正するために利用されます。
  • 放射性炭素年代(conventional radiocarbon age)は通常、西暦1950年を基準年(0年)としたBPで報告されます。
  • 全地球的な放射性炭素濃度は経年変動しているため、放射性炭素年代をそのまま暦年代に読み替えることができません。
  • 放射性炭素年代の暦年代への変換は較正曲線を用いて行われ、結果は年代の幅で示されます。 較正の方法には交点法と確率法があります。
  • 国際的に認められている暦年代較正曲線はPJ Reimer らにより作成され、約B.C. 48000まで到達しています。
  • 較正曲線のX軸は較正年代、Y軸は放射性炭素年代を示します。 

機器分析によって得られた結果はすべて正確性と信頼性を確保するための較正が必要です。 較正とは、得られたデータの確度および信頼性に疑念の余地がないよう、機器と計測単位の関係を確立することです。結果の較正は、分析データと、認証された標準物質などの分析データと比較を行うことによって行われます。 放射性炭素年代測定では、一般的な機器分析と同様、分析データの正確性と信頼性を確保するための較正が行われます。 さらに次のステップとして、得られた放射性炭素年代を、暦年代に変換するための較正が行われます。

Beta AMS

放射性炭素年代、半減期、放射性炭素年代の較正

暦年代への較正を行っていない放射性炭素年代は一般的に西暦1950年を基準年(0年)としたBP (Before Present またはBefore Physics) で報告されます。 BPは他の年代測定方法でも用いられることがありますが、放射性炭素年代測定とは定義が異なりますので注意が必要です。  放射性炭素年代測定において用いられる半減期はウイリアム・リビーによって決められた5568年です。 現在では正しいとされているケンブリッジの半減期(5730年)は、途中で半減期を変更することから生じる混乱を避けるために用いられていません。

放射性炭素年代は半減期を5568年とし、大気のC14濃度が過去から現在まで同じであるという前提で計算されます。 しかし、実際の大気C14濃度は変動しているため、放射性炭素年代を暦年代としてそのまま利用することができません。そのため、放射性炭素年代の暦年代への変換が必要となります。 

その手段として最も汎用性が高いものが、年輪年代(デンドロ・クロノロジー)を利用したものです。

デンドロ・クロノロジーと放射性炭素年代

デンドロ・クロノロジーは木が1年に1年輪を形成して生長することを利用します。 そのため年輪年代法と呼ばれます。 デンドロ・クロノロジーの専門家は、木年輪のパターンを解析することによって、年輪がいつ形成されたものかを特定します。 

デンドロ・クロノロジーの知見は放射性炭素年代測定に重要な役割を果たしました。 デンドロ・クロノロジーによって年代のわかっている木年輪の放射性炭素年代測定を行うことによって、放射性炭素年代の正確度を検証することができました。 1950年代、著名なDutchman Hessel de Vriesらの科学者が多くの検証を行い、年輪年代と放射性炭素年代が一致しないことを確認しました

今でも年輪年代法は放射性炭素年代の較正において最も重要な役割を果たしています。 年輪年代と放射性炭素年代の比較により、約11000年前までの放射性炭素年代較正が可能です。(注)  主に較正のために分析された木は、ブリスルコーン松(アメリカ)とオーク(ドイツ)です。

放射性炭素年代の較正

原理的には、測定試料の放射性炭素濃度と、既知年代年輪の放射性炭素濃度を比較することによって、測定試料の実年代を決定することは簡単です。 もし既知年代年輪と測定試料の放射性炭素年濃度が同じであったら、測定試料の年代はその年輪の年代であると結論できるからです。

しかし実際にはいろいろな理由によってそう簡単に実年代を決定することはできません。 主な理由は、年輪の放射性炭素年代にも、試料の放射性炭素年代にも誤差があるからです。 従って、一般的に較正された放射性炭素年代は、単年ではなく、ある程度の幅をもって示されます。 放射性炭素年代の較正のためには較正曲線が必要であり、確率法または交点法によって結果が示されます。

較正曲線

最初の較正曲線は、連続した年輪年代を利用して、約8000年前まで作成されました。 これは、1960年代におけるWesley Ferguson 、Hans Suessらの功績です。 Suessの曲線はブリスルコーン松の年輪を基本に作成されました。

Suessの曲線以来多くの較正曲線が発表されました。しかしその数が増えるにつれて、新たな問題が生じることとなりました。 後に加速器質量分析(AMS)による高精度な放射性炭素年代測定が一般的に利用されるようになりさらに較正曲線の改良が進みました。 ベルファスト研究所によるアイリッシュ・オークの年輪年代に基づいた高精度の較正曲線が作成されました。

今日、国際的に認められた暦年代較正曲線は、約B.C.48000 まで到達しています。(Reimer et. al., INTCAL13 and Marine13 radiocarbon age calibration curves 0 – 50000 yrs cal BP, Radiocarbon 55(4), 2013)  1950年以降に関しては、非常に多くの大気C14濃度のデータが得られています。 それらのデータは1950年以降の若い試料の暦年代を得るのに有効です。 (Hua, et. al. Atmospheric Radiocarbon for the period 1950-2010, Radiocarbon, 55(4), 2013).

一般的な 較正曲線 のX軸は較正年代、Y軸は放射性炭素年代を示します。

較正における慣習

較正された年代に関しては、単にBC, AD, BPと記述するより、cal BC, cal AD, cal BPと記載するほうが混乱を避けられるでしょう。 cal BC, cal ADは西暦年に相当しますが、cal BPは1950年が基準年となります。

放射性炭素年代の記載

結果の報告では、較正暦年代だけでなく、較正されていない放射性炭素年代、較正のデータセット、較正方法、較正結果の確かさ(確率)も併記されるべきです。 

 

Last Updated May 5, 2016