炭化物や木材から汚染を取り除く

炭化物や木材のサンプルのコンタミネーション

埋没時、採取時、保存時などで炭素を含んだ物質にサンプルがさらされると、サンプルの炭素量に影響があることがあります。サンプルの炭素量に影響を与えた全ての物質はコンタミネーションとみなします。

自然要因の汚染源には埋没土壌中のフミン酸やフルボ酸などにさらされる堆積環境があります。これらは、植物や動物の組織が土壌中の微生物によって分解される際に生成される酸です。植物根の侵入も現代の炭素(モダンカーボン)を炭化物や木材のサンプルに混入させます。ライムストーン(石灰岩)もまた、掘削地によっては汚染源となります。

人為的な汚染源は、採取時やサンプリング時に人間の不用意や不注意によってもたらされます。タバコ、髪の毛、繊維、梱包時に使う紙、オイル、グリース、接着剤さえも人為的汚染源とみなします。

汚染のタイプや程度、サンプルや汚染源の相対年代によって、木材や炭化物のコンタミネーションによるAMS年代測定へ影響は異なります。

ライムストーンをAMS年代測定前に取り除かない場合、結果は真の年代よりもかなり古くなります。ライムストーンは地理的由来のため、どの考古学的サンプルよりも年代が古くなります。

フミン酸やフルボ酸は、木材や炭化物のサンプルの表面に付着し、吸着と言われる作用によって炭素を交換します。こうしたことが起こると、有機酸を生成する有機物の年代次第で、サンプルの年代を新しくも古くもします。植物根の侵入も現代の炭素をサンプルに持ち込みます。

通常、“無限大の年代”(infinite-age)の汚染源はサンプルを真の年代よりも相当古くして、現代の炭素はサンプルの年代を無視できない程に新しくしてしまいます。

正確な結果を得るために、ラボでは放射性炭素年代測定前に全ての木材や炭化物のサンプルに対して前処理を行います。

化学薬品を使わずに汚染を取り除く作業を物理的前処理と言います。木材や炭化物に対して行われる物理的前処理としては、ピンセットを用いた植物根の除去、メスを使って表面を削り取る清浄、サンプルサイズの縮小があります。

ハンマーやのみを使って、木を破砕します。ミルでパウダー状になるまで粉砕することもあります。炭化物のサンプルをシャーレ上で砕きます。すり鉢・すりこぎを使うこともあります。前処理を効果的にするためにサンプルサイズを小さくして、表面積を増やします。

物理的前処理の後、AMS測定の前に、可能な限りコンタミネーションを取り除くために化学的前処理が施されます。

AMSラボによって、化学的前処理の方法に違いがあるかもしれませんが、大抵は、同じ化学薬品を用います。薬品の濃度、温度、前処理の時間、繰り返し回数などはサンプルによって違います。

まず塩酸(HCl)により炭酸塩を除去した後、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリを使って、二次的に混入した有機酸を除去します。最後に酸洗浄を行いアルカリを中和して、サンプルを乾燥させます。

木材や炭化物のサンプルに酸洗浄のみを施す場合があります。これは、サンプルがアルカリ可溶の場合に適用されます。放射性炭素年代測定の結果は、有機物の内包全体のものとなります。

木材のサンプルが古すぎたり、汚染されすぎたりしている場合は、acid/alkali/acid(酸/アルカリ/酸洗浄)の処理後、セルロース抽出ステップが加わります。セルロース抽出は、pHや温度が管理された条件下で、亜塩素酸ナトリウム(NaCIO2)に浸漬されて行われます。