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放射性炭素年代測定の基礎知識

  • 炭素14(C14 or 14C)はわずかに放射能を放出する炭素同位体です「放射性炭素」とも呼ばれており、同位体クロノメーターでもあります
  • 放射性炭素年代測定法は有機物や一部の無機物で測定が可能です(金属は測定できません)
  • ガスプロポーショナルカウンティング、液体シンチレーションカウンティング、 加速器質量分析法(AMS法)が主な測定方法です

炭素年代測定法とは?

放射性炭素年代測定は、生物由来の炭素系物質が存在した客観的な年代を推定のための方法です。

その「年代」は、試料の放射性炭素(C14)の量を測定し、国際的に使用されている標準物質と比較することによって推定できます。

この炭素年代測定の発明は20世紀の人類の発明の中でも最も重要なもののひとつであり、過去数万年から現代にいたるまでの地球そして人類の歴史を解明するには、放射性炭素年代測定が不可欠です。

考古学、人類学においてセオリーの立証または反証の根拠として、この炭素年代測定法が使用されていますし、地質学、水文学、地球物理学、大気科学、海洋学、古気候学など幅広い分野でも応用されてきました。

放射性炭素年代測定の基本原理

Beta Analytic 14C Dating Lab放射性炭素(C14)は炭素の同位体のひとつで、放射性物質です。炭素の安定同位体には、C12とC13があります。

放射性炭素は大気圏上層で、宇宙線の二次中性子と窒素の反応によって生成されます。

生成された放射性炭素は大気中でただちに酸化され二酸化炭素として地球圏の炭素サイクルに組み込まれます。

植物は光合成によって放射性炭素を含んだ二酸化炭素を取り込み、動物も食物連鎖によって放射性炭素を取り込みます。それら生物の生命が終わると、生物圏の炭素のやりとりも終了します。

その時から、放射性炭素はその放射性崩壊の割合に従って減っていきます。

放射性炭素の測定方法

試料の放射性炭素(C14)量を測るには主に三つの手法があります。ガスプロポーショナルカウンティング法、液体シンチレーションカウンティング法、 加速器質量分析法(AMS)です。

ガスプロポーショナルカウンティングは、試料を二酸化炭素に変え、ガスプロポーショナルカウンタによって放射性炭素濃度を測定します。

液体シンチレーションカウンティングは1960年代から普及した方法です。液体に調製された試料にシンチレーターと呼ばれる光を発生する物質が加えられます。シンチレーターはベータ粒子が入ると光ります。試料は2つの光電子増倍管の間に置かれ両方の光電子増倍管に光が記録された時のみカウントされます。

加速器質量分析法(AMS)は三つの方法の中では一番新しいものです。この質量分析法ではC12,C13に対する放射性炭素の比が直接計測されます。

放射性炭素年代測定の対象物

全ての物質が質量分析法を用いた放射性炭素年代測定の対象になるわけではありません。
炭素年代測定は炭素を含む物質が対象となります。つまり、炭素を含む有機物や、貝・アラゴナイトなどの無機物などは、炭素年代測定をすることが可能です。

これまでに、 , , , , , 革, ピート, 土壌, 土器付着物, 花粉, サンゴ, 繊維, 紙 といった様々な試料の放射性炭素年代測定がなされてきました。

放射性炭素年代測定を行うためには、二次的に混入した炭素を取り除くために、物理的および化学的な試料の前処理が必要です。

放射性炭素年代測定の標準試料(スタンダード)

年代のわからない試料の年代は、放射性炭素年代測定によって得た試料の放射性炭素(C14)濃度と、標準試料および放射性炭素を含まない試料(バックグラウンド試料)の放射性炭素濃度を比較することによって決められます。

最初の標準試料はアメリカの規格基準局が発行したシュウ酸標準体Oxalic Acid I(HOxI)です。このシュウ酸は1955年の甜菜から調製されました。Oxalic Acid I の放射性炭素濃度に0.95を乗じた値は化石燃料の影響を受けていない1890年の木の放射性炭素濃度(absolute radiocarbon standard)に相当します。

Oxalic Acid Iがほぼ消費された後、1977年にフランスのビート糖蜜から放射性炭素年代測定に使用される新しい標準試料Oxalic Acid II(HOxII)が調製されました。 Oxalic Acid IIの放射性炭素量は Oxalic Acid Iの放射性炭素量と殆ど変りません。

ここ何年もの時間をかけて、次なる炭素年代測定に使用できる標準物質が作り試みが続けられています。

また炭素年代測定を行う際には、質量分析法を用いた分析中に得られる結果以外の影響を差し引くため、標準試料以外に、放射性炭素をほぼ含まないバックグラウンド試料の放射性炭素濃度も測定されます。

つまり、バックラウンド試料の放射性炭素濃度を、測定試料の放射性炭素濃度から差し引くのです。

バックグラウンド試料には通常、石炭、亜炭、石灰岩といった地質学的に非常に古いことがわかっているもの(いわゆるinfinite ageの物質)が用いられます。

放射性炭素年代について

放射性炭素測定の結果、つまり物質の推定年代は、「放射性炭素年代(Conventional Radiocarbon Age:CRA)」と呼ばれます。

この放射性炭素年代(Conventional Radiocarbon Age)は、

(a)リビーの半減期を用いること
(b) Oxalic Acid I or II もしくはそれに準拠する標準試料を用いること
(c)安定同位体(C13)を-25‰に規格化することによって同位体分別の補正を行うこと
(d)AD1950を基準年(0 yBP) とすること
(e)放射性炭素濃度は一定であったと仮定する
と定義されています。
また誤差は統計誤差を用い、放射性炭素年代測定の 結果の報告書には “±” と記されます。

放射性炭素年代測定法の開発者

アメリカの物理化学者 ウイラード・リビー博士(Willard Libby)は第二次大戦後、放射性炭素の測定方法を開発するためのチームを率いていました。リビー博士は初めて生命体には放射性炭素(C14)が存在していることを唱えました。

リビー博士とそのチームは初めて有機物試料の放射性炭素を測定するのに成功し、論文を発表しました。また初めて放射性炭素年の半減期 (リビーの半減期5568±30年)を測定しました。

1960年、リビー博士は放射性炭素年代測定法の開発に尽力した功績でノーベル化学賞を受賞しました。

参照資料:

1. American Chemical Society National Historic Chemical Landmarks. Discovery of Radiocarbon Dating (accessed October 31, 2017).
2. Sheridan Bowman, Radiocarbon Dating: Interpreting the Past (1990), University of California Press

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